金融法学会では、2021年まで、金融取引に関する重要判例を取り上げて考察する「金融判例研究」を金融法務事情の特集号として公表してきました。金融法学会では、時代に合わせた金融判例研究の在り方を検討し、このたび、金融法研究第40号から、従来の「概観」に当たる部分を金融取引および金融法の現在にあわせて再構成した「金融判例の概観」を掲載することにしました。また、従来の「個別判例研究」に当たる部分についても、2024年1月より金融法務事情において後継の企画(金融判例研究)が開始しています。

 以上のリニューアルの趣旨は次のとおりです。

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 金融法学会では、その事業の1つとして、金融取引に関する重要判例を取り上げて考察し、年1回、金融財政事情研究会のご支援のもと、金融法務事情の特集号として、「金融判例研究」を公表してきた。金融判例研究は、金融取引の業務に即して、「預金・為替」「貸付・管理・回収」「担保・保証」「法的回収(執行・倒産)」「その他(付随業務・周辺業務等)」の5つの領域に分類し、それぞれの領域に属する過去1年間の裁判例の「概観」をなすとともに、15件の裁判例を「個別判例研究」として取り上げる、という体裁で行われてきた。
  しかし、金融法の分野はこれら5つの領域に収まらず、このような領域ごとの整理・分析では、現在の金融判例の姿を適切にとらえることが難しくなっている。また、個別判例研究については、1年に1度の機会をもって行うよりも、より随時に行うのがむしろ望ましいと考えられる。
  そこで、金融法学会では、金融取引に関する重要判例を取り上げて考察するという事業につき、その実施方法について見直し、「概観」については、民法研究者、商法研究者、民事手続法研究者、弁護士、銀行法務関係者に執筆を依頼し、「それぞれの執筆者の視点から見た金融判例この1年」というイメージで、網羅的たることを要せず、自由にそれぞれの関心・視点から金融判例の概観を示してもらうこととし、それを学会誌である金融法研究にて公表することとした。また、「個別判例研究」については、年に数回、金融法務事情において、個別の裁判例を取り上げて分析を行うこととし、2024年1月(金融法務事情2225号)から公表を開始している。
   金融判例の概観は、おおむね前年(今回であれば、2023年1月~12月)に、主として最高裁判所民事判例集、判例タイムズ、判例時報、金融法務事情、金融・商事判例に掲載された判例・裁判例から選択することとしている。なお、「おおむね」というのは、翌年の1月や前々年の12月などに注目されるものが登場していれば、取り上げることを妨げない趣旨であり、また、「主として」というのは、最高裁判所のホームページ等に掲載された判例・裁判例を含む趣旨である。
  なお、従来の金融判例研究の最終号が金融法務事情2021年9月10日号(2169号)であり、対象とした判例・裁判例は、2021年4月30日までの間に発刊された上記諸誌に掲載されたものであったことから、継続性の観点を入れ、初回については、2021年5月から2022年12月までの金融判例で特に重要なものは、概観執筆者の判断でとりあげていただくこととしている。

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   金融取引に関する重要な判例の考察は、金融法学会の事業の1つです。今回のリニューアルが、金融法の研究のいっそうの展開に益するものと期待しています。